MAKOTO_blog

MAKOTOの起業家支援ブログ

エクイティ型クラウドファンディングについて

こんにちは、MAKOTOの下里です。

 

2回目の今回は、2018/7/9に社内のクローズド勉強会でもテーマにした、エクイティ型クラウドファンディングについて解説します。
ちなみに、MAKOTOでは月に1回、社内勉強会を開催していまして、この回の趣旨としては、ベンチャー支援者として、エクイティ型クラウドファンディングをどう捉え、どういうアドバイスをしていくかを、改めて整理しました。このブログを通じて、皆様にもシェアさせて頂きますので、参考にして頂ければ幸いです。
※筆者の個人的な見解に基づいた内容です。

 

f:id:K_Shimosato:20180807151231j:plain f:id:K_Shimosato:20180807151233j:plain

2018/7/9 社内勉強会の様子

 

■エクイティ型クラウドファンディングとは

▼概念

クラウドファンディング(CF)は、インターネットを通じて多くの方から広く資金を集める仕組みですが、エクイティ型CFは、未上場会社が発行する株式を集める資金の対価にするものです。
つまり、未上場の会社に個人投資家が投資する機会を得られる、逆にベンチャーからすると、IPOしていなくても一般投資家から資金調達できる、ということです。 

▼主なプラットフォームとその特徴

・FUNDINNO https://fundinno.com/
 累計成約額13億超。ベンチャー側が手数料負担。(株)日本クラウドキャピタルが運営。
・GoAngel https://go-angel.com/
 累計成約額約1億。投資者側が手数料負担。DANベンチャーキャピタル(株)が運営。
・EMERADA EQUITY https://emeradaco.com/
 累計成約額約2億。株式ではなく、新株予約権。転換価格は次回適格ファイナンス時の株価をベースに決定。調達側はVCや大手事業会社の出資先に限定。エメラダ(株)が運営。

運営会社はどこも、「第一種少額電子募集取扱業者」の登録事業者です。この仕組みでは、ベンチャーが資金調達できる額は1年間に1億円未満、投資家が投資できる額は同一の会社につき1年間に50万円以下という少額要件があります。

▼FUNDINNOについて

現在国内最大のプラットフォームであるFUNDINNOについて、ざっくり整理しました。

・投資家
個人のみで法人はNG。審査厳しめという評判。
・投資手法
普通株式。投資契約書・株主間契約は無し。
・手数料
ベンチャー側負担で、3,000万円までの金額に対する20%。3,000万円超分は15%、6,000万円超分は10%。(5,000万円調達だと3,000*20%+2,000*15%=900万円の手数料)
その他、審査料10万とランニングで60万/yのシステム利用料が発生するようです。
・案件
調達または約定となっている案件のデータを見ると、こんな感じです。

f:id:K_Shimosato:20180807151712p:plain※FUNDINNOwebサイトより筆者作成

調達額やValuationのレンジとしては、シード期後半からシリーズAの間くらいでしょうか。
個人的には少しValuation高めな印象を受けました。

▼状況

一言で言うと、個人投資家が集まり相当盛り上がっています。かなりの割合の案件が、募集開始後すぐに目標額を突破し、さらにアッパーで設定されている上限募集額まで到達しているようです。
上限募集額までの到達も、早い案件だと数分ですので、案件の募集開始を見てユーザ登録(審査で数日かかる)をしていると投資できない、という状況です。

資金調達を考えているベンチャーにとっては、Valuation、調達額、スピード感のどれを取っても、非常に魅力的な調達方法だと感じられると思います。

■では、ベンチャーはエクイティ型CFをどんどん使うと良い?

▼要注意

あくまで「現時点では」、という枕詞が付きますが、特にVCからの投資獲得を狙うベンチャーでは使うべきではない、と私は考えています。

ベンチャーの資金調達が多様化することは非常に意義が高く、またVCから投資を受けづらい業種業態でも、数千万円をwebで集められるというのは素晴らしいことだと思っていますが、リスクやデメリットをしっかり認識する必要があります。
(実際に、VCからの投資を受けるために買戻しを検討されている事業者さんがいるらしい、なんてお話も聞きました。。。)

なお、EMERADA EQUITYは新株予約権とすることで後述のリスク・デメリットの一部を避けています。その代り、少々複雑な設計かつ投資者にとっての権利が株式より弱いので、投資者としては株式型の方が魅力的に映るかもしれません。 

▼リスク・デメリット

大小ありますが、ざっと列挙します。

株主管理・株主構成上の問題
・反社チェック、どこまでやっているか。(表明保証はとっているが)
・投資者が死亡もしくは破産などして所有権が移転するケースが発生しやすい。
(CFでなくともあるリスクですが、人数多いので起こりやすくなる)
・株主総会のコスト増、スピードダウン。
・敵対的株主(競合会社のオーナーなど)の参加を排除できない。
・会社運営では、全株主の合意が必要(1株でも反対者がいるとNG)な事項がある。
(スクイーズアウトという最終手段もあるにはあるが、、、)

VCとしてネガティブな点(上記に関連して/加えて)
・Valuationを上げて優先株で入る場合、例えばみなし清算などに対応するためには株主間契約がマスト。人数多いと大変。
・EXITの難易度上がる。

あり得ない仮定ではありますが、極端な話、ほぼ同じ状況のベンチャーがA社(CF株主有)、B社(CF株主無)とあったとして、VCやMAの買い手は間違いなくB社を選びます。

▼エクイティ型CFの今後

と、ここまでネガティブな意見を書いてしまいましたが、ベンチャーに新しい資金調達方法を提供し、実際に資金を供給できているわけですから、非常に有意義なものだと考えています。

肝心なのは、理解の促進と、方法のブラッシュアップだと思います。

例えば、VC投資を受けづらくなったりMAの難易度が上がったり(出来ないわけでは無いです)という、負の側面を理解した上で資本政策を組む。プラットフォーム側も十分に説明する。
また、機関投資家が入りやすいような設計にする。など。

以下は、あくまで株式型とした場合のジャストアイデアです。

1.ありかたを変える
「エンジェル投資家となり、IPO/MAを目指すベンチャーの成長を支援する」という文脈で投資家を募らない。調達側もIPO/MAを志向しない。
共感ベースで投資家にとっての収益は二の次であったり、期待リターンもキャピタルゲインによるものではなく、株主優待、インカムゲイン、買戻し等をベースとした設計にする。

2.やりかたを変える
株主間契約に絶対に参加するというコミットをしてもらう。電子契約サービスとの連携し、株主総会の電子化までパッケージにする。など。
※具体にどう設計するか、法的・コスト的にどこまで可能かなど、しっかり考える必要があります。

3.まとめてみる
CF投資家を束ねたSPVを作り、株主を一本化。
※SPVの組成・運用のためには金商法上の要件をクリアする必要があり、また、数千万のSPVでは運用コスト負けしそう。

■まとめ

VCとしての立場から言うと、私は、投資検討の際に、株式型CFで調達済みのベンチャーに対してはちょっと投資は難しい、新株予約権型CFであればそれよりは若干ポジティブ、と考えています。

何度も書きましたが、エクイティ型CFは非常に有意義なものだと考えています。ただ、現時点では、不幸な行き違いが発生しやすい状況になってしまっていると認識しています。

エクイティ型CFより多少歴史の長いVC投資ですが、その手法は進歩し続けています。同様に、エクイティ型CFも進歩していくだろうなと期待しています。

なお、少額要件として1年間に1億円までという規制がありますが、これはCFによる調達額だけではなく、通常のVC投資等、CFプラットフォーム外での調達額も合算されるようです。ここは制度面の見直しもして欲しいな、と思っています。

 

▼第2回はここまで。

今回のtopicsにからむことでもからまないことでも、何かご相談有ればお気軽にどうぞ。

 投資チーム宛て:fund@※

 下里宛て:k.shimosato@※ またはFacebook

 ※はmkto.org

 

 

以上、MAKOTOブログ第2回、下里でした。

-----------------------------------------

f:id:K_Shimosato:20180703162020j:plain 下里 健二

1981年広島生まれ、仙台在住。
東北大学理学研究科修士課程卒業後、ITベンチャーに就職。
その後、投資顧問、ITベンチャーを経てMAKOTOにJoin。

現在は主に、ベンチャーへの投資・支援、ファンド運営に従事。

オフィスの近くにイオンと松屋があり、ついつい安き&易きに流れて昼ごはんの多様性が低下中。