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MAKOTOの起業家支援ブログ

VCとは何か。交渉する前に知っておこう。

こんにちは、MAKOTOの下里です。

 

4回目の今回は、初回で割愛してしまった「ベンチャーキャピタル(VC)とはなんぞや」について短めにご説明します。また、よく聞かれる(突っ込まれる)ポイントについても、後半でQ&Aの形で書きました。

孫子曰く「敵を知り己を知れば百戦殆うからず」。別にVCはベンチャー企業にとって敵ではないですが、資金調達時の交渉相手であることは確かです。
今後、資金調達を計画しているベンチャー企業の方の参考になればと思います。
※筆者の個人的な見解に基づいた内容です。

【目次】 

■VCとは
■Q&A
・投資するときの企業価値ってどう決めてるの?
・リターン目線、高すぎない?
・ハンズオン支援って、何やってくれるの?

 

■ベンチャーキャピタル(VC)とは

▼何屋さん?

初回でこう書きました。

“VCという事業は、PE(Private Equity)投資の一種で、高い成長性が見込まれる未上場企業に投資し、IPOやM&AによるEXIT時に収益を得る、という収益モデルの投資事業です。“

もう少し細かく書いていきます。

▼VCの種類

まず、VCの種類として、独立系、政府系、銀行系、大学系、事業会社系(Corporate Venture Capital、通称CVC)などがあります。
さらに、各VC・各ファンドごとに投資対象に特徴があり、業種やエリア、起業家属性などに特化したファンドもあります。(AI特化や再起起業家特化など)
特化とまで言わずとも、ある程度興味のある事業領域を定めているケースが多いですね。
また、投資対象のベンチャー企業のステージ(事業進捗度)での切り分けもあります。その場合、投資金額もステージによって大きくなっていきます。

▼VCのビジネスモデル(独立系)

・主に機関投資家から預かったお金を、未上場企業に株式投資し、その企業が成長して株価が上昇した後に売却することで、キャピタルゲインを狙う。
・投資のEXIT(出口)は、IPOやM&A。それを狙える会社だけに投資する。
・ファンド満期は7-12年程度。5年以内に上場するような企業を探している。
・ハイリスク・ハイリターンを指向。ファンド全体の期待リターンは、IRR20-30%。倒産やEXIT未達を考えると投資案件毎の期待リターンはIRR50%超。超シード期の期待投資倍率は100倍~。
※IRR:内部収益率

いろんなストラクチャーがありえるのですが、最もシンプルな構造を図示するとこうなります。なお、いわゆるファンドというのは様々な形態がありますが、今回は、VCの場合に用いられることが多い「投資事業有限責任組合(LPS)」という形を例にしています。読んで字の如く、投資を目的とした組合ですね。

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お金の流れとしては、運用者(General Partner:GP)が投資家(Limited Partner:LP)から資金を預かり、ベンチャー企業に出資し、成長支援をし、EXIT(IPO,M&Aなど)によって得られた収益を分配する、という形です。

▼VCのお仕事とビジネスモデル

GPの仕事としては「ベンチャー企業への投資&支援」と「ファンドというハコの管理」の2種類の業務があります。
それらに応じて、管理報酬と成果報酬という2つの収入があります。管理報酬は、ファンドの維持管理や案件の発掘・DD(デューデリジェンス≒企業価値の評価やリスク要因の調査)・投資実務にかかる人件費など、投資の成果を出すための必要経費分です。これで儲かるような性質の報酬ではありません。
ファンドが経済的に成功した際にもらえる成功報酬が最大のリターンになります。

参考)このあたりをもっと詳しく知りたい方は、グロービス・キャピタル・パートナーズの高宮さんが書かれた下記記事をお読み頂くと良いと思います。

知られざるVCのビジネスモデル、その全貌! – The First Penguin

■よくある質問(Q&A)

▼投資するときの企業価値ってどう決めてるの?

極論、ベンチャー企業とVC間の交渉でのみ決まります。ベンチャー側が「今100億だ!」と言って、VC側が「そうだね」となれば、そのベンチャーの企業価値は100億ということになります。

しかし、どんな交渉も吹っ掛けすぎるとそこで破談になります。そこで基準となるのが、俗に「VCメソッド」と言われる方法です。これは、VCがあるベンチャー企業への投資において期待リターンを出せるかどうか、VCを主体として考える方法です。

簡易的に、その計算方法を下記します。

前提条件)
 計画:5年後、当期純利益3億円(税引後)で上場
 市場:類似業種の上場企業のPERは約30倍
 交渉先VCの案件ごとの期待リターン:IRR50%

・上場時時価総額の試算
上場時時価総額=当期純利益 × PER
       = 3億 × 30
       = 90億円

・投資時時価総額の試算
⇒割引率50%で現在まで割り引く
投資時時価総額=90億円 / (1.5^5)
       =11.8億円 ※Post Money Valuation(=VC投資後の企業価値)

※単純化するため、希薄化や上場ディスカウントの影響は慮外としています。

あくまで、ベースになるだけです。実際には事業計画と資本政策を見ながら、議論・交渉していきます。

なお、他にも企業価値算定の方法がいくつかあり、有名なものとしては、純資産価値法、Multiple法(EBITDA Multipleなど)、DCF法などです。DCF法は高い企業価値を出しやすいので、頑張って計算してくる起業家の方もいらっしゃいますが、あくまで参考値、しかも参考度合いはかなり低い数字として取り扱われます。DCF法ベースでプッシュしまくるのは止めておきましょう。 

▼リターン目線、投資額の50倍とか100倍とか高すぎない?

ベンチャー企業への投資が、上場株への投資や不動産投資などに比べて、ハイリスクな投資であることは皆さんイメージ頂けると思います。

実は、ミドルリスクミドルリターンと言われる不動産投資においても、機関投資家からの資金を運用するファンドではリターン目線はIRR20%超です。(借入でレバレッジをかけられることや、短期でREIT等への売却を見越した投資も一定数あるという事情もありますが。)

VCファンドに資金を投資している機関投資家は、上場株式、為替、先物、不動産、太陽光、オプションなど色々な投資商品を組み合わせてポートフォリオを構成しており、ハイリスクミドルリターンのようなリスクリターンが見合わない商品を組み込むことは基本的にありません。つまり、他の投資先と比べて魅力度が負けていないことが必要です。

ベンチャー投資の特性として、1.投資期間が長くなりやすい、2.投資期間中の換価性が非常に低い、そして、3. EXIT(IPOやM&A)にたどり着く確率が低い、ということを考えると、リターン目線は高くならざるを得ない、ということになります。

なお、すべてのファンドが同じリターン目線ではありません。特にCVCは全く違うロジックで動いている場合(例えば、その会社と事業的シナジーが見込める分野に投資する、など)も多いです。VCと交渉する際は、そのVCが何を目的に投資をしているか、しっかり確認するようにしましょう。

▼ハンズオン支援って聞くけど、何をやってくれるの?

各VC、各キャピタリストによって、スタンスや内容は様々です。

経営・プロダクト・マーケティング、チーム作りなど広範な領域でのアドバイス、事業成長のためのキーとなる人材や企業の紹介、次の資金調達の支援、などが主なものになります。

起業家がVCに対して、「こういう支援を期待している」と言うのは、全く失礼なことではないので、交渉時にしっかりお話しされるのが良いかと思います。

■終わりに

ベンチャー企業にとって、VCは資金調達するまでは「交渉相手」です。しかし、資金調達した後は「同志」となります。事前に、向いている方向が同じか、一緒に走っていけるか、など、経済的な面だけに限らず、利害が一致する必要があります。
単なるお金の出し手以上の存在になってきますので、このようなお話が、VCについて理解の一助となれば幸いです。 

▼第4回はここまで。

今回のtopicsにからむことでもからまないことでも、何かご相談有ればお気軽にどうぞ。

 投資チーム宛て:fund@※

 下里宛て:k.shimosato@※ またはFacebook

 ※はmkto.org

 

 

以上、MAKOTOブログ第4回、下里でした。

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f:id:K_Shimosato:20180703162020j:plain 下里 健二

1981年広島生まれ、仙台在住。
東北大学理学研究科修士課程卒業後、ITベンチャーに就職。
その後、投資顧問、ITベンチャーを経てMAKOTOにJoin。

現在は主に、ベンチャーへの投資・支援、ファンド運営に従事。

寒くなってお酒がおいしい季節になってきましたね。まぁ暑い時期もおいしいですが。