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MAKOTOの起業家支援ブログ

TOHOKU GROWTH Accelerator~レクチャー最終回の様子をレポート!~

こんにちは!MAKOTOインターンの佐藤桃子(ももk)です。

12月9日に行われたTGAのレクチャー第5回(最終回!)の模様をレポートします。

 

まずはウォーミングアップとして、前回のレクチャーからの2週間の間で起こったことと今日得たい情報について少人数で話し合いました。

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今回のレクチャーでは、株式会社BIZVALの中田隆三氏より「EXIT(M&A編)」についてお話ししていただきました!

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(1)直近のM&AによるEXIT環境は?

 これまで、スタートアップのEXITとしてはIPOが主流でしたが、近年はM&Aの件数が増加しています。2018年1~10月の買収件数は49件であり、過去最高だった2017年通年の46件を上回っています。中でも、大手国内企業による買収が目立っています、

 大手企業は自分たちで稼ぐだけでなく、投資を通してどのように利益を得るかについても非常に悩んでおり、その悩みを解消するために、大手企業がベンチャー企業に投資するためのCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の設立が活発化しています。なんと、国内だけで200社以上のCVCがあります!

 

(2)どんなM&A、EXITを描くのか?

  M&Aには以下のように様々なスキームがありますが、自社にとってのEXITとは何かを十分に検討してスキームを選択する必要があります。売却をして一次で資金化・投資回収を図る場合には1,株式譲渡、2,株式交換が、大手傘下となり継続して事業を営み、より未来で投資回収を図る場合は3,会社分割、株式譲渡、4,第三者割当増資が適しています。

 

1,株式譲渡:

シンプルに売り手である株主(創業者や投資家)に売却資金が入る

2,株式交換:

上場企業の株式を代わりに交付してもらう(完全子会社になる)。市場流通する株式なので、好きなタイミングで売却し、資金化できる

3,会社分割、事業譲渡(会社の事業単位を売る):

事業の一部を売却するスキームなので「会社にお金が入る」ため、資金回収にワンクッション必要となる。

4,第三者割当増資:

株主ではなく「会社にお金が入る」ため、直接的な資金回収は困難。

 

(3)M&Aとは?

そもそもM&AとはMerger&Acquisitionの略で、日本語で「合併と買収」と訳されます。

さらに、買収側の視点に立つと、

①株式の譲受 ②第三者割当増資の引き受け ③株式交換と株式移転 ④会社の全部または一部の「分割」による譲受 ⑤事業の譲受 ⑥合併

に分解されます。

様々な手法があり複雑ですが、5W2Hを抑えると要点を掴むことができます。

■誰が(Who)

買収側(被買収側)は個人か?法人か?

■どこで(Where)

In-In(国内同士)、In-Out(国内→海外)、Out-In(海外→国内)

→法律等が異なるので検討論点として重要

■何を(What)

「法人」を丸ごと買ってくるのか、「事業」を買ってくるのか。

■何故(Why)

戦略的に買収意図が何か、明確にする。

■いつまでに(When)

ゴール設計。スキームによっては法定の待期期間をようするものもあるので注意が必要。

■どうやって(How)

どのスキームを選択するか。

■いくらで(How much)

会社の株式価値はいくらなのか、事業価値はいくらなのか、資産価値(無形固定資産、知財等)はいくらなのか。

 

(4)M&Aでの陥りがちな罠とは?

 M&Aには陥りがちな罠が2点ある、と中田さんは述べます。1点目は「強気で交渉すれば良い」と考えてしまうこと。強気で臨み続けると、結果として良い結果が得られないことが多く、気付いたときには事業継承や資金調達のタイミングを逸し、足元を見られたバリュエーションになってしまいます。2点目は、「ファイナンスくらい自分で出来る!」と全て自分でやろうとしてしまい、割に合わない時間的なコストがかかってしまうこと。M&Aを実行するにあたってタイミングは重要です。頼れる部分は頼るよう心掛けましょう。

 M&Aを失敗させないためには、自社が置かれている環境を整理、分析した上で「本当に必要なM&Aか」をチェックすることが不可欠です。

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 中田氏率いる株式会社BIZVALでは、M&Aサービスサイト「BIZVAL」上で無料で企業価値評価を1分で出来るサービスを提供しています。気軽に企業価値を知ることができるので、M&Aに興味のある事業者の方ははぜひ使てみてください!

 

最後に

 M&Aは単に「大企業が企業を買収してシナジーを得る」という様なイメージしか無かったのですが、IPOと並ぶスタートアップのEXIT方法になっているという現状に驚きました。最近はM&Aの件数が増えると同時に、BIZVALさんのようにM&Aをサポートするサービスも増えており、M&Aに追い風が吹いているので、これからの動向をチェックしていきたいです!

 5回のレクチャーは全て非常に濃い内容で、スタートアップを取り巻く環境や成長フェーズについて詳細に学ぶことが出来ました。Demodayまであと2か月。自分で書いたブログを読み返しつつ(笑)、スタートアップに関する知識をより一層インプットしてDemodayに臨みたいと思います!

 

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佐藤桃子(ももk)

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東北大学経済学部に在籍。

2018年2月、MAKOTOにインターンとしてJoin。

地方創生、TOHOKU GROWTH Accelerator、メディア作りなど幅広い業務に従事。

大学では国際協力サークルを立ち上げたり、学部内で最もブラックなゼミで研究に没頭したりした。

忘年会→クリスマス→年越し→お正月での暴飲暴食の結果が怖すぎて、2019年になってほしくないです。

TOHOKU GROWTH Accelerator~プレゼン指導の様子をレポート!~

こんにちは!MAKOTOインターンの佐藤桃子(ももk)です。

11月25日に行われたレクチャー第4回の模様をレポートします!

 

今回の講師はヤフーアカデミア学長の伊藤羊一氏、テーマは「プレゼンテーション」!

TGA採択者によるプレゼンテーションとそれに対しての伊藤氏によるフィードバック、講義という豪華なコンテンツでした。

熱血!プレゼン指導

早速、Growthコースに採択されたZIG、フリーバル、クラウドセンス、ゼンシンの4社と次世代コースに採択されたPrezy、ザミラの2社にプレゼンテーションをしていただきました。

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一社ずつ、ストーリーの作り方、初見でも理解しやすい説明の仕方、発音のクセなど、様々なフィードバックをいただきましたが、最も強調していたことは「ドヤるところでドヤる!」という点です。どの事業にもビジネスモデルや課題解決の手法において、固有の強みがあります。しかし、その強みを淡々と説明してしまうと、聞いている人に刺さりません。「マネタイズ手法を見つけました」、「1位をとりました」、「世界初です」といったフレーズは、少し語尾を上げたり、力をこめたりするだけで他の部分よりも強調することができます。伊藤氏から「人生最大のドヤで!」という言葉を掛けられた採択者も!

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また、プレゼンテーションはプレゼンターが一方的に話すものではなく、双方向のコミュニケーションです。聞き手を意識しながら、複雑なビジネスモデルや市場の現状を具体的にイメージしやすいように説明したり、考えなくても分かるような言葉のチョイス、聞き手を巻き込むような話し方についても指導をしていただきました。

プレゼンもAIDMAを意識

続いてプレゼンテーションについてのレクチャーです。

そもそもプレゼンテーション、そして「人に伝える」ことは「人に動いてもらうため」に行われます。

では、人に動いてもらうためには、何を意識しなければならないのでしょう。

ここで出てくるのが「AIDMA」です!「AIDMA」とは、

「Attantion→Interest→Desire→Memory→Action」の頭文字をとったマーケティング用語で、消費者が情報を受け取ってからそれに対して行動を起こすまでの心理の移り変わりを示します。これをプレゼンテーションに適用して考えてみましょう。

 

Attention(注目する)

「この説明難しい」、「何言ってるか分からない」と一度思ってしまうと、聞き手の注意が散漫になってしまいます。そうならないために、スッキリ、カンタンに説明する必要があります。字数は少なく、文章は短く、中学生でも分かるくらい簡単な説明を心掛け、聞き手が迷子にならないようにしましょう。

 

Interest(関心を持つ)

関心を持ってもらうためには、ロジカルに考えたストーリーを作りこむ必要があります。一見難しそうに思えますが、伊藤氏は、ロジカル(論理的)=意味が通じていること、考えられた=結論が出ていること、と定義しています。つまり、しっかり結論とその根拠が示されており意味が通じていれば、聞き手の関心をしっかりプレゼンの内容に向かせることが出来ます。

 

Desire(いいね!と思う)

Attention、Interestは上記の通り左脳に訴えかけるものです。「いいね!」と思ってもらうためには右脳に訴えることが不可欠です。人はイメージでワクワクします。スタートアップのプレゼンは「こういうことが問題です、だからこうしたいです」ということは上手く伝えられていることが多い一方で、「こうなりたいです!こんな未来を実現したいです!」という将来像を想像させるのが弱いと伊藤氏は述べます。現状存在しないものは写真や絵を活用することで聞き手が具体的にイメージ出来るようにしましょう。

 

Memory(覚える)

プレゼンの内容を覚えてもらうためには、ポイントをキーワードで言うことが必要です。どんなに内容が良くても終了から数分経つと「結局何を言っていたんだっけ?」と主張を忘れてしまうこと、ありますよね。覚えやすい言葉でその主張のポイントを一言で、キャッチ―に表現すると、聞き手の記憶に留まります。

 

Action(行動する)

最後に、実際に聞き手に行動を起こさせるのに重要なことは「情熱と自信」です。「情熱=一番好きですか?」、「自信=とことん準備しましたか?」という問いに収束します。最後は気合いで押し切りましょう!

質疑応答

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質疑応答での参加者と伊藤氏のやりとりをいくつかピックアップしてご紹介します!

Q,羊一さんも緊張して言おうとしていたことが飛ぶような経験をしたことはありますか?

A,若い頃はプレゼンが本当に苦手でした!ですが、場数を踏んで、フィードバックをもらっては修正することを繰り返すことで克服しました。

 

Q,壇上で歩くのが苦手なのですが、コツはありますか?

A,「ジョブズみたいに歩かなきゃ!」と意識するとわざとらしくなってしまうので、「声のシャワーを届ける」ことを意識するべきです。空間全体に声のシャワーを届けるために、今会場の右の方に向かって話しているから次は左の方に向かって話そう、という風に考えながら振舞うと自然に出来ます。

 

Q,プレゼンの中で強調するところ、しないところはあった方が良いですか?

A,もちろんです!プレゼンテーションはコンサートと一緒。じっくり聞くところ、盛り上がるところがはっきり分かれていると、聞き手がより一層飽きなくなります。

終わりに

プレゼンテーションはただ伝えれば良い、という風に思いがちですが、真の目的は「人に動いてもらうこと」という点が印象的でした。プレゼンテーションの結果、聞き手に次にどんなアクションをしてほしいのかを考えながら、ストーリー構成、見せ方、話し方などを工夫するように心掛けたいですね。また、伊藤氏から熱烈指導を受けた採択者の方々が2月24日のDemoDayでどんなプレゼンテーションを行うのか、楽しみです!

 

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佐藤桃子(ももk)

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東北大学経済学部に在籍。

2018年2月、MAKOTOにインターンとしてJoin。

地方創生、TOHOKU GROWTH Accelerator、メディア作りなど幅広い業務に従事。

大学では国際協力サークルを立ち上げたり、学部内で最もブラックなゼミで研究に没頭したりした。

日本の冬は寒すぎて、春休みに避寒地に旅行することだけを楽しみに生きています。

TOHOKU GROWTH Acceleratorサイドイベント ~ベルリンから創造的な都市作りのプロがやってきた!!~

 

こんにちは。MAKOTOインターンの東北大学3年益子夏実(ましっこー)です。

今回はMAKOTOが仙台市とともに企画・運営するアクセラレータープログラムのサイドイベントとして、ベルリンから講師をお呼びして、創造的な地域生み出すためのレクチャーが行われました。そのレクチャーの様子をインターン生の目線からお伝えしていきます!

 

イベント概要

 本日の講演会の題目は「ベルリンを中心に創造的な地域を生み出す”Urban Catalyst 流”地域のつくり方」です。

 仙台市は日本で初めて、自治体として東北全域を対象にした広域アクレラレータープログラムを展開。東北地方を盛り上げるために、東北全域で起業家を育成しています。起業というと、企業家個人のスキルが重要に感じられますが、実は、それを取り巻く地域の環境や住民の方々の協力も必要です!

 東北を企業家を育てる地域にするために、どのような環境が必要なのか。今回は、ドイツのベルリンから、市民参加型の街づくりの先駆者として有名なCordeliaさんをお呼びし、「地域住民を巻き込んだ創造的な地域の作り方」をテーマにお話をいただきました。

 

[第1部] 仙台市役所職員の白川さん、株式会社グランマ代表取締役の本村さんからのお話

 仙台市市役所職員の白川さん、株式会社グランマ代表取締役の本村さんが東北圏再建計画を熱く語ってくれました。

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 特に本村さんに関しては、自身の起業経験から、「地域全体を巻き込んでいかないと起業は成功しない。だから、東北地方全域を起業に適した地域としてデザインしたい。」とお話していました。起業の成功者は地域の小さなコミュニティーだけで事業が持続する仕組みを作っているそうです。そのため企業家と地域の人々が連携してお互いに助け合うことが大切だと本村さんは語っていました。本村さんは地域の方々の協力を得るべく、小さなイベントを複数回開催し、そこに地域の人を呼び込み、信頼関係を築いていく方法を取っているそうです。今回、Cordeliaさんを講演者としてお呼びしたのも、本村さんがドイツの街づくりから東北地方が学ぶべきことがたくさんあると考えているからだそうです。そんな本村さんの東北地方を起業に適した地域にしたいという熱い思いがCordeliaさんのドイツでの街づくりの経験とリンクしたのですね!東北を盛り上げたいと考える熱いハートを持った人々より一層増えていってほしいです!

 

熱心に話を聴く参加者たち

今回のイベントには地方創生に興味のある、学生から社会人まで幅広い年齢層の方にお集まりいただきました。

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メモを取ったり、うなづいたり。一言一句聞き漏らさないという姿勢が感じられました。また、質問タイムでは多くの方が予想を超える多くの質問を投げかけ、真剣に東北の未来につて考えている印象を受けました。

 

[第2部] Cordeliaさんによる講演。

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 第2部ではドイツのベルリンで市民参加型の都市のビジョニングやスペース開発など先駆的な事例を生み出している集団「Urban Catalyst」のエグゼグティブパートナー、Cordeliaさんからお話をいただきました。

 Cordeliaさんは、ドイツの街をよりよくするためにドイツの住民を巻き込んだ様々な仕掛けを語ってくれました。

 市民参加型の都市作りをするにあたり、大切なポイントが3つあるそうです。

 1つ目は明確なビジョン(都市像)を持つこと。自分がベルリンをどんな街にしたいのか明確なビジョンがないと市民全体を巻き込んで都市作りをすることができないといいます。

 2つ目は、ベルリンに住む住民とじっくりと話し合うこと。都市には、怒りっぽい人、感傷的な人、リーダー気質のある人など様々なステークホルダーが存在しています。都市作りを成功させるためにはこれらのステークホルダー達全員が納得させる形を取らなければいけません。そのため、ドイツでは都市計画のすり合わせを行う様々な仕掛けが存在しています。例えば、ベルリンには街の一角に住民同士が議論するスペースがあります。このスペースを利用してベルリンをどんな街にしたいか日々住民と議論するそうです。また、広報の仕方にも工夫があります。都市計画書を多くの住民が手軽に見られるように新聞に掲載したり、掲示板に掲載したりする工夫がなされているそうです。

 3つ目は綿密な計画を立てること。Cordeliaさんは都市計画を作る時、ベルリンの市長と話し合い、作りたい都市像の詳細を紙におとしていきます。また、その時、工業地域、森林地域、公共施設などをどこに置くべきか、都市の最適化を考えながら計画を立てるそうです。

 このように、ドイツでは都市作りに市民を巻き込む様々な工夫が凝らされています。街づくりにあまり住民が関わらない日本はドイツから学ぶべきことがたくさんありそうです。

 

質疑応答

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講演会の後は、参加者から多数の質問が投げかけられました

  

「ベルリンの都市作りを東北で再現化できるか。なぜ、ドイツでは住民が積極的に都市作りに関わるのか。」などドイツの街づくりのノウハウを東北の街作りに生かそうと参加者の熱も高まります。筆者はこの光景を見ていて、東北の未来をこのような参加者が担っていくのだと思うととてもワクワクしました!

 

 いかがだったでしょうか。今回、筆者はイベントに参加し、起業家育成のために住民を巻き込むことの重要性を知ることができました。ぜひ、より多くの東北をよくしたいと熱い思いを持つ人々にAcceleratorのイベントに参加してほしいです!一般社団法人MAKOTOでは今後も仙台市と連携し東北地方を盛り上げていく活動を行っていきます。ぜひ、応援のほどよろしくお願いします!

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益子夏実(ましっこー)

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東北大学法学部に所属。

2017年11月MAKOTOにインターン生としてJoin。

ビジネスプランコンテストなど各種イベントの運営。会社のブログ作成などに従事。

大学では国際交流団体のリーダーを務めたり、貧困の子供達に勉強を教えるプログラムに参加したりと幅広く活動している。今後は大学の某就活支援団体のリーダーになろうという野望がある。

趣味は散歩。理由はあまり共感はされないが、散歩をすると思考が整理されて、新しいアイデアを思いつくから。

TOHOKU GROWTH Accelerator 第2回レクチャーをレポート!

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こんにちは、MAKOTOインターンの佐藤桃子(ももk)です!

今回は10月28日に行われた、TOHOKU GROWTH Acceleratorの第2回レクチャーの様子をお伝えします。

第2回の講師はグロービス・キャピタル・パートナーズの代表パートナー兼最高執行責任者を務める今野穣氏です。

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「投資される会社/起業家になるために伝えたい4つのこと」をテーマに、これまで投資されてきた企業についての事例も織り交ぜながらお話しいただきました!

レクチャー後半では、受講者によるワークショップも行われたのでその様子もレポートします。

 

今野氏によるレクチャー

1、大きなトレンドを掴め

投資家も人間なので、トレンドに乗っているモノに惹かれてしまう部分があると今野氏は述べます。

では、最近のトレンドはなんでしょう?

ここでは今野氏のレクチャーの中から、代表的なトレンド2つを紹介します。

■サブスクリプション

一定期間に「定額料金」を支払うことで、継続的にサービスを受けられるビジネスモデルのこと。代表的なものに音楽や動画の配信サービス、自動車レンタルといったものが挙げられますが、必ず人が買うけれど、買うのがめんどくさい...そんな商品にサブスクリプションは向いているのです。変わったものではカミソリのサブスクリプションを行っているベンチャーもあるそうです。

■スマホ、ネットの外へ

世界中でスマートフォンの普及率は飽和状態になると同時にwi-fi環境は整備され、どこにいてもスマホを通じてネット接続できるようになりました。そんな中、中国を端緒としたデジタル決済の爆発的な普及は日本にも及び、数々の企業がデジタル決済の主導権を握るべく争う状況になりました。AirbnbやUberの台頭などからも分かる通り、インターネットはもはやエンターテイメントではなく、生活に欠かせないものとなってきています。

2、大きくなるビジネスほどシンプル
エレベーターピッチのような短い時間でビジネスをプレゼンしなければならない場面でも「それいいね!」と言ってもらえるように、ビジネスプランはシンプルなものでなければなりません。
3、機会は平等、固有の差別化を作れ

上記の大きなトレンドが存在する中、他のビジネスプランと差別化を図るためには「私(のビジネス)は他とここが違う」というポイントが含まれていることが不可欠。このポイントを5W2Hに分けて紹介します。

★Who「誰が誰とやるのか?」→プランだけでなく自分/チームを売れ

★What「何の問題を解決するのか?」→具体的に困っている人を意識せよ

★Why「なぜそれをやりたいと思うのか?」→大義や原体験が共感を生む

☆When,Why now「なぜ今なのか?」→「変化」に「機会」あり

☆How「どうやってやるのか?」→KSF(オセロの四隅)を特定せよ

☆Where「どこからはじめるのか」→一点突破、全面展開

・How much「どんなビジネスモデルか」→結局お金を払ってもらわないと

「★Who/What/Why」で65%、「☆When,Why now/How/Where」で35%、「How much」で10%の配分で投資家は見ているそうです。お金になるビジネスモデルか否かといったことよりも、まずは起業家のマインドや事業にかける想いを投資家は最重視しています。

4、資本政策には細心の注意を

トレンドを掴み、差別化されたビジネスプランを作ったところで、資金調達の段階で注意を怠ると後戻り出来ないポイントがあります。資本政策の基本原則5つを紹介します。

1,事業モデルによって必要な資金の量、タイミングは異なるので、事業モデルに準拠したファイナンス計画を組む

2,マイルストーンを意識したファイナンスタイミング(事業の価値は意味のあるマイルストーンを達成するごとに非連続、階段状に跳ね上がる)

3,中長期での”逆引き線”で考える(資本政策は中長期の逆算で、選択肢を減らさないように)

4,資本コストのメリット、デメリットを理解する(事業の特性、ステージを鑑みて調達手段を組み合わせ、資本コストを最適化する)

5,投資家は資金や評価額以外の価値も含めて選ぶ(予め資金の他に投資家に何を求めるのか明確にしておき、投資家を選ぶ)

 

ワークショップ

続いて、レクチャー受講者による、「Seed→Early期における4つチェックポイントを自らの事業にあてはめるとどうなるのか」というお題でのワークショップとプレゼンテーションを行いました!

Seed→Early期におけるチェックポイント

1,初期の熱狂的なユーザーはいるか

2,本件を成功させるためのカギとなるスイッチを知っているか

3,次の資金調達に向けてのマイルストーンをどう設計するか

4,Audienceを「WoW!」と思わせる要素をどこに持たせるか

 

「我こそは!」と手を挙げた5名の受講者に発表していただきました。

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「そのKPIを達成するためのチームはどうやって作るの?」

「全て自社で内製するのか、既存の事業所にソリューションだけ売るのかで資本政策は変わってくるけど、どうするつもりなの?」

「初期のユーザーは何に困っているの?」

などなど、今野氏からは鋭い質問が飛び交いました。

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TGAが始動してから約1か月、今野氏からのアドバイスや質疑応答を糧にビジネスはますますブラッシュアップされるでしょう!

最後に

レクチャーの随所で、今野氏が「チーム」という言葉を強調していたのが印象的でした。起業家個人に注目が集まることも多いですが、事業を成功させるためのメンバーを集めることも起業家のスキルの一つに違いありません。また、5W2Hのうちの「Who,What,Why」が投資家の目線の半分以上だということも、投資検討者のみならず、今後起業を考えている人、事業を作りたい人は肝に銘じておきたいですね。

 

 

 

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佐藤桃子(ももケー)

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東北大学経済学部に在籍。

 

東北大学経済学部に在籍。

2018年2月、MAKOTOにインターンとしてJoin。

地方創生、TOHOKU GROWTH Accelerator、新規事業の立ち上げなど幅広い業務に従事。

最近は学業が落ち着き、本業が女子大生なのかインターンなのか分からなくなりました。

VCとは何か。交渉する前に知っておこう。

こんにちは、MAKOTOの下里です。

 

4回目の今回は、初回で割愛してしまった「ベンチャーキャピタル(VC)とはなんぞや」について短めにご説明します。また、よく聞かれる(突っ込まれる)ポイントについても、後半でQ&Aの形で書きました。

孫子曰く「敵を知り己を知れば百戦殆うからず」。別にVCはベンチャー企業にとって敵ではないですが、資金調達時の交渉相手であることは確かです。
今後、資金調達を計画しているベンチャー企業の方の参考になればと思います。
※筆者の個人的な見解に基づいた内容です。

【目次】 

■VCとは
■Q&A
・投資するときの企業価値ってどう決めてるの?
・リターン目線、高すぎない?
・ハンズオン支援って、何やってくれるの?

 

■ベンチャーキャピタル(VC)とは

▼何屋さん?

初回でこう書きました。

“VCという事業は、PE(Private Equity)投資の一種で、高い成長性が見込まれる未上場企業に投資し、IPOやM&AによるEXIT時に収益を得る、という収益モデルの投資事業です。“

もう少し細かく書いていきます。

▼VCの種類

まず、VCの種類として、独立系、政府系、銀行系、大学系、事業会社系(Corporate Venture Capital、通称CVC)などがあります。
さらに、各VC・各ファンドごとに投資対象に特徴があり、業種やエリア、起業家属性などに特化したファンドもあります。(AI特化や再起起業家特化など)
特化とまで言わずとも、ある程度興味のある事業領域を定めているケースが多いですね。
また、投資対象のベンチャー企業のステージ(事業進捗度)での切り分けもあります。その場合、投資金額もステージによって大きくなっていきます。

▼VCのビジネスモデル(独立系)

・主に機関投資家から預かったお金を、未上場企業に株式投資し、その企業が成長して株価が上昇した後に売却することで、キャピタルゲインを狙う。
・投資のEXIT(出口)は、IPOやM&A。それを狙える会社だけに投資する。
・ファンド満期は7-12年程度。5年以内に上場するような企業を探している。
・ハイリスク・ハイリターンを指向。ファンド全体の期待リターンは、IRR20-30%。倒産やEXIT未達を考えると投資案件毎の期待リターンはIRR50%超。超シード期の期待投資倍率は100倍~。
※IRR:内部収益率

いろんなストラクチャーがありえるのですが、最もシンプルな構造を図示するとこうなります。なお、いわゆるファンドというのは様々な形態がありますが、今回は、VCの場合に用いられることが多い「投資事業有限責任組合(LPS)」という形を例にしています。読んで字の如く、投資を目的とした組合ですね。

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お金の流れとしては、運用者(General Partner:GP)が投資家(Limited Partner:LP)から資金を預かり、ベンチャー企業に出資し、成長支援をし、EXIT(IPO,M&Aなど)によって得られた収益を分配する、という形です。

▼VCのお仕事とビジネスモデル

GPの仕事としては「ベンチャー企業への投資&支援」と「ファンドというハコの管理」の2種類の業務があります。
それらに応じて、管理報酬と成果報酬という2つの収入があります。管理報酬は、ファンドの維持管理や案件の発掘・DD(デューデリジェンス≒企業価値の評価やリスク要因の調査)・投資実務にかかる人件費など、投資の成果を出すための必要経費分です。これで儲かるような性質の報酬ではありません。
ファンドが経済的に成功した際にもらえる成功報酬が最大のリターンになります。

参考)このあたりをもっと詳しく知りたい方は、グロービス・キャピタル・パートナーズの高宮さんが書かれた下記記事をお読み頂くと良いと思います。

知られざるVCのビジネスモデル、その全貌! – The First Penguin

■よくある質問(Q&A)

▼投資するときの企業価値ってどう決めてるの?

極論、ベンチャー企業とVC間の交渉でのみ決まります。ベンチャー側が「今100億だ!」と言って、VC側が「そうだね」となれば、そのベンチャーの企業価値は100億ということになります。

しかし、どんな交渉も吹っ掛けすぎるとそこで破談になります。そこで基準となるのが、俗に「VCメソッド」と言われる方法です。これは、VCがあるベンチャー企業への投資において期待リターンを出せるかどうか、VCを主体として考える方法です。

簡易的に、その計算方法を下記します。

前提条件)
 計画:5年後、当期純利益3億円(税引後)で上場
 市場:類似業種の上場企業のPERは約30倍
 交渉先VCの案件ごとの期待リターン:IRR50%

・上場時時価総額の試算
上場時時価総額=当期純利益 × PER
       = 3億 × 30
       = 90億円

・投資時時価総額の試算
⇒割引率50%で現在まで割り引く
投資時時価総額=90億円 / (1.5^5)
       =11.8億円 ※Post Money Valuation(=VC投資後の企業価値)

※単純化するため、希薄化や上場ディスカウントの影響は慮外としています。

あくまで、ベースになるだけです。実際には事業計画と資本政策を見ながら、議論・交渉していきます。

なお、他にも企業価値算定の方法がいくつかあり、有名なものとしては、純資産価値法、Multiple法(EBITDA Multipleなど)、DCF法などです。DCF法は高い企業価値を出しやすいので、頑張って計算してくる起業家の方もいらっしゃいますが、あくまで参考値、しかも参考度合いはかなり低い数字として取り扱われます。DCF法ベースでプッシュしまくるのは止めておきましょう。 

▼リターン目線、投資額の50倍とか100倍とか高すぎない?

ベンチャー企業への投資が、上場株への投資や不動産投資などに比べて、ハイリスクな投資であることは皆さんイメージ頂けると思います。

実は、ミドルリスクミドルリターンと言われる不動産投資においても、機関投資家からの資金を運用するファンドではリターン目線はIRR20%超です。(借入でレバレッジをかけられることや、短期でREIT等への売却を見越した投資も一定数あるという事情もありますが。)

VCファンドに資金を投資している機関投資家は、上場株式、為替、先物、不動産、太陽光、オプションなど色々な投資商品を組み合わせてポートフォリオを構成しており、ハイリスクミドルリターンのようなリスクリターンが見合わない商品を組み込むことは基本的にありません。つまり、他の投資先と比べて魅力度が負けていないことが必要です。

ベンチャー投資の特性として、1.投資期間が長くなりやすい、2.投資期間中の換価性が非常に低い、そして、3. EXIT(IPOやM&A)にたどり着く確率が低い、ということを考えると、リターン目線は高くならざるを得ない、ということになります。

なお、すべてのファンドが同じリターン目線ではありません。特にCVCは全く違うロジックで動いている場合(例えば、その会社と事業的シナジーが見込める分野に投資する、など)も多いです。VCと交渉する際は、そのVCが何を目的に投資をしているか、しっかり確認するようにしましょう。

▼ハンズオン支援って聞くけど、何をやってくれるの?

各VC、各キャピタリストによって、スタンスや内容は様々です。

経営・プロダクト・マーケティング、チーム作りなど広範な領域でのアドバイス、事業成長のためのキーとなる人材や企業の紹介、次の資金調達の支援、などが主なものになります。

起業家がVCに対して、「こういう支援を期待している」と言うのは、全く失礼なことではないので、交渉時にしっかりお話しされるのが良いかと思います。

■終わりに

ベンチャー企業にとって、VCは資金調達するまでは「交渉相手」です。しかし、資金調達した後は「同志」となります。事前に、向いている方向が同じか、一緒に走っていけるか、など、経済的な面だけに限らず、利害が一致する必要があります。
単なるお金の出し手以上の存在になってきますので、このようなお話が、VCについて理解の一助となれば幸いです。 

▼第4回はここまで。

今回のtopicsにからむことでもからまないことでも、何かご相談有ればお気軽にどうぞ。

 投資チーム宛て:fund@※

 下里宛て:k.shimosato@※ またはFacebook

 ※はmkto.org

 

 

以上、MAKOTOブログ第4回、下里でした。

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f:id:K_Shimosato:20180703162020j:plain 下里 健二

1981年広島生まれ、仙台在住。
東北大学理学研究科修士課程卒業後、ITベンチャーに就職。
その後、投資顧問、ITベンチャーを経てMAKOTOにJoin。

現在は主に、ベンチャーへの投資・支援、ファンド運営に従事。

寒くなってお酒がおいしい季節になってきましたね。まぁ暑い時期もおいしいですが。 

TOHOKU GROWTH Acceleratorレクチャーがスタート!

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こんにちは、MAKOTOインターンの東北大学3年佐藤桃子(ももケー)です!
今回から、MAKOTOが仙台市と共に企画・運営するアクセラレータープログラム、TOHOKU GROWTH Acceleratorの学生スタッフとしての目線で、当プログラムの内容をお伝えしていきます!

■TOHOKU GROWTH Acceleratorとは

東北のロールモデルとなる企業の創出およびエコシステムの構築を目的とし、事業を急成長させていくスタートアップ、新規事業に挑戦する中小企業の成長を支援するプログラムです。

2019年2月に行われるDemo Dayでの発表に向けて、採択事業者に対してメンターや専門アドバイザーによるレクチャー、メンタリングを実施していきます。

レクチャー第1回(10月14日)

初回は「VCからの資金調達」と「Slack特別レクチャー」の豪華2本立て!

レクチャー開始前には、採択起業家や次世代育成コースの若き起業家たちによる自己紹介と意気込み披露も行われ、会場が一気に熱くなりました。 

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MAKOTOの下里によるレクチャー「VCからの資金調達」

「VCが何者で、何を考えているのか」というテーマで一貫してレクチャーが行われました。VCとしての事業を行い、今回の採択企業についても、投資先候補としても検討しているため、お互いの視線は本気そのものです。

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そもそもVC(ベンチャーキャピタル)は、短期間でIPOやM&A(EXIT)を狙えるくらい成長可能性のある未上場企業に株式投資し、キャピタルゲインを得るビジネスモデルをとっています。期限内にEXITまでたどり着ける企業は一握りですので、VCとの交渉は基本ハードなもの。

レクチャー内ではVCメソッドのvaluation、資本政策作成のポイント、優先株式やJ-KISSに関する知識などが次々と紹介され、知っているとVCとの交渉に有効に働くような情報が満載でした!

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複雑なベンチャーファイナンスの知識も絡み、難易度は決して易しいものではありませんでしたが、積極的に質問する受講者もいました。


Slack Japanの藤原茂晴氏による「Slack特別レクチャー」

続いて第二部では、TGAの専門メンターであるSlack Japanの藤原茂晴氏による「Slack特別レクチャー」!

Slackとは世界中の様々な企業や団体で使用されているチャットをベースとしたコラボレーションツールで、TGAのオンラインでのコミュニケーションもSlackを活用しています。

今回はSlackの基本的な使い方を中心にレクチャーしていただきました。

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実際に使いながらSlackでのコミュニケーションに慣れていこうということで、藤原氏がSlack上で投げかけた質問に返信する形で回答したり、どれだけSlackを使いこなせるかチャレンジするスピードクイズも行われました!

普段からSlackを使う参加者も学びの多いコンテンツを提供していただくことになり、盛り上がりを見せました。

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正解者にはSlack特製グッズのプレゼントが!

Slackでのコミュニケーションによって受講者同士の距離が縮まったところで、第一回レクチャーは幕を下ろしました。

TOHOKU GROWTH Acceleratorの今後

TOHOKU GROWTH Acceleratorは、2018年10月から12月にかけてのレクチャー期間と2019年2月までの継続的なメンタリングを行うことで、採択企業全6社の事業の成長をサポートしていきます。

2019年2月24日には仙台でDemo Dayを開催し、全国から集まる起業家、大企業、ベンチャーキャピタル、メディア、支援者などの前で採択起業家自らのビジョンやビジネスプランを発表していただきます。

このプログラムから東北のロールモデルとなる大きな事業を輩出し、東北から日本、そして世界を変えるような起業家、中小企業を持続的に生み出すエコシステムを創出すべく、起業家と共に伴走していきます!

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佐藤桃子(ももケー)

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東北大学経済学部に在籍。

2018年2月、MAKOTOにインターンとしてJoin。

地方創生、TOHOKU GROWTH Accelerator、メディア作りなど幅広い業務に従事。

大学では国際協力サークルを立ち上げたり、学部内で最もブラックなゼミで研究に没頭したりした。

趣味は海外旅行とドライブと言いたいところだが、免許は持っていない。

 

シードベンチャーのファイナンス(J-KISSとみなし優先株式)

こんにちは、MAKOTOの下里です。

 

3回目の今回は、2018/8/20、9/18の2回にわたって社内のクローズド勉強会でテーマにした、シード期のベンチャーファイナンスの手法について解説します。

最近「J-KISS」や「みなし優先株式」といった投資手法がシード期において使われることが多くなっていますが、ぱっと契約書を読んだだけですぐに理解するのは難しい内容です。特に、首都圏ベンチャーより情報が入りづらい地方ベンチャーの方の理解の一助となれば幸いです。
※筆者の個人的な見解に基づいた内容です。

 

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社内勉強会の様子

 

■そもそもなぜ優先株式を使うのか?

▼概念

例えば、pre9億円のベンチャーに1億円投資したとします(post10億でシェア10%)。
VCとしては、上場時、時価総額100億・シェア7%とかを考えて出資するわけですが、諸事情により3億円でMA EXITとなった場合、経営株主とVCのリターンはどうなるでしょうか?

全て普通株式だった場合、3億円を経営株主とVCのシェア比率9:1で配分することになります。分配額は、前者は2.7億、後者は3,000万ということになり、VCが7,000万マイナスになる一方、経営株主はそれなりの創業者利益を得ることになります。(もちろん、経営株主も目指していたところまでたどり着けず不満足ではあると思います。)

このように、スモールMA時には、経営株主とVCで大きく利害が食い違うため、意見がまとまりにくくなります。結果、適切なタイミングでMAができない等、意思決定に支障が出てしまいます。また、VCとしても、上場まで到達する事がよほど確実な先にしか投資ができないという事になってしまいますが、シード期にそんな投資先は存在しません。こういった問題を防ぐために優先株式が活用されます。

冒頭のケースで、優先株式での投資とし、「残余財産分配額1x、参加型」というキメがあればこうなります。

3億円のうち1億円をVCに優先分配し、残る2億を9:1で分配します。
そうすると、分配額は、経営株主は1.8億、VCは1.2億となり、少なくとも両者ともプラスリターンだった、ということになります。(やはり、双方満足ではないでしょうが。)

こういった仕組みを使うことで、VCはある程度思い切ったValuationでベンチャーを評価し、投資できるわけです。 

▼優先株の問題点

とはいえ、優先株は便利なだけではなく、下記のようなデメリットがあります。
・諸条件の交渉が大変
・株主総会を開くたび、種類株式総会も開催する必要がある

もちろんHigh Valuationで大き目の投資となる場合はVC側としても優先株を選択しますが、優先株式を使うと負担が重すぎる、でも普通株式で投資するには高すぎるValuationだな、というケースがあるのです。

そこで、この問題点を回避すべく、投資時点では優先株式ではないが類似した性質を持ち、また、後で優先株式でのファイナンス時に優先株式に転換されるような投資手法として、まず「Convertible Note」、その後「Convertible Equity」が開発されました。

■「Convertible Note」

▼概要

「Convertible Note」とは、当初は貸付金として資金供給し、その後、次のエクイティファイナンス時(※)に株に転換させるやり方です。
 ※一定の条件アリ。「適格資金調達」等と呼び、調達額や残余財産分配権などの投資条件を満たした場合転換される。

 ・最大の特徴は、投資時に株価を決めなくて良いこと。(適格資金調達時に決定された株価に連動して、転換される株価が決定される)
 そのため、スピーディーな投資決定がしやすい。(JPと比較しUSではベンチャー側の方が交渉力が強いため、VCやエンジェルとしては早く決めることに対するニーズが大きい。)

 ・貸付金なので、株式より優先して返済される。
 ・書類もシンプル。
 ・日本では主に新株予約権付社債で実装。 

▼リスク・デメリット

・ベンチャーにとっては負債。B/Sは悪化する。
・日本国内では、通常の貸付で行うと貸金業に該当する恐れがあり、また、新株予約権付社債で行うと結局複雑&登記の費用・手間が大きくなるという問題がある。
・USよりJPでは、VC側の交渉力が強いことが多いため、とにかく早く!(Valuationも後回し)、というニーズは比較的小さい。

ベンチャーにとって「Convertible Note」の最大のデメリットはdebt(負債)である、という点にあります。そこで、debtではなくequityの形にしよう、ということで出てきたのが、「Convertible Equity」という考え方です。
 参考:海外の著名シードVCにより開発された「Convertible Equity」の手法
 ・Y-combinatorのSAFE(simple agreement for future equity)
 ・500 startupsのKISS(Keep It Simple Security)
とはいえ、国によって会社法など法律が異なるため、そのまま日本で使えるわけではありません。「Convertible Equity」は、日本国内では主にJ-KISSとみなし優先株という2つのやり方で、実装されています。 

■J-KISS

▼概要

J-KISSは、上記のKISSの日本版として500 Startups Japanが公開されている投資契約の標準ドキュメントです。

“J-KISSは日本版KISS: Keep It Simple Security、つまり簡単に早くシンプルに資金調達するための投資契約書です。シード段階ではシンプルに素早く資金調達を行い、素早くプロダクトマーケットフィットまでたどり着く。そしてシリーズAの時に初めて、優先株を使って複雑な条件交渉を行えば良い、というシリコンバレーで蓄積された経験を形にしたものです。”
500 Startups Japan webサイトより引用

・新株予約権としての取り扱い(有償新株予約権)
・投資時点ではValuationはFIXしない。
・投資金額、discount(転換価格調整)、Valuation Cap(転換上限価格)を決めるのみ。
・適格資金調達(テンプレでは1億円以上の資金調達)が行われることが決定した場合、J-KISSは転換されてシリーズA優先株に転換
・J-KISSが転換される前に買収された場合、投資額の2倍で金銭償還するか、Valuation Capで普通株に転換した後で買収。

■みなし優先株式

▼概要

みなし優先株式は、Femtoの磯崎哲也氏がご自身の著書「起業のエクイティ・ファイナンス」でドキュメントを公開・解説されている投資手法です。

“普通株式を使った日本版のconvertible equityのアイデアです。会社法上の普通株式なのですが、契約で優先株式と同様の性質を付与されているので、みなし優先株式と呼ぶことにします。Convertible noteが、(a) 書類がシンプルで誰にもわかりやすい、(b)投資時に株価を決めなくていい (c)負債である(普通株式より優先して返済が受けられる)であるのに対し、(a)日本で広く誰でも知っている普通株式の増資を用いて比較的シンプルな事務で済み、(b)投資時に株価をある程度決めてしまう代わりに、(c)負債でなく「資本」であることを明確にするという方法です。”
「起業のエクイティ・ファイナンス」より引用

・普通株式
・Valuationは決める。
・discount、capは基本無し(決められるが複雑化する)
・適格資金調達が行われることが決定した場合、転換されてシリーズA優先株に転換(1:1)
・全株主を巻き込む必要アリ(「全株主の合意があれば、発行済株式の一部を他の種類株式に転換できる」という登記実務を利用)
・転換される前に買収された場合、一般的な優先株の残余財産分配と類似したキメ(例えば、投資額の1倍+参加型)。

■まとめ

J-KISSとみなし優先株式は、どちらも向き不向きがあり、優劣がはっきりしたものではありませんので、十分に理解した上で、自社の資本政策に合った手法を選ぶのが良いのではと思います。
なお、両方とも標準契約ドキュメントが公開されていますが、条文に変更を入れたバージョンが使われているケースもあるので、しっかり読み込むようにしましょう。

個人的には、J-KISSのValuation Capをベンチャー側が理解しきれていない事例があったことと、「普通株式である」という分かりやすさがあることから、Valuationを決められるのであれば、みなし優先株式の方が双方誤解が生まれにくいという点で良いかな、と考えています。一方で、Valuationを先延ばしするにはJ-KISSが向いており、みなし優先株式でdiscountとcapを実現しようとすると、転換時の手間が結構大変なことになります。

投資をする側もされる側も、相応のリテラシーが求められますね。
資本政策は基本的には後戻りできませんので、誰からどういった形で資金調達をするかよく検討しましょう。シード期は専属のCFOを置くことが資金的に難しいため、資金調達もCEOの大事な仕事になる場合が多いです。事業を進捗させることが本質なので資金調達に割く時間がもったいない!というのは事実ですが、逆に次の調達時などに困らないよう、リスクの認識はしっかりしておきましょう。

 

▼第3回はここまで。

今回のtopicsにからむことでもからまないことでも、何かご相談有ればお気軽にどうぞ。

 投資チーム宛て:fund@※

 下里宛て:k.shimosato@※ またはFacebook

 ※はmkto.org

 

 

以上、MAKOTOブログ第3回、下里でした。

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f:id:K_Shimosato:20180703162020j:plain 下里 健二

1981年広島生まれ、仙台在住。
東北大学理学研究科修士課程卒業後、ITベンチャーに就職。
その後、投資顧問、ITベンチャーを経てMAKOTOにJoin。

現在は主に、ベンチャーへの投資・支援、ファンド運営に従事。

今夏はほぼ海に行けませんでした。。。